医師の働き方改革で注目される、宿日直許可について医療機関・医師にアンケート調査を実施
医療人材総合サービスを提供し、『Dr.転職なび』『Dr.アルなび』を運営する株式会社エムステージ(東京都品川区、代表取締役:杉田雄二)は、2024年にせまる「医師の働き方改革」以降の医師確保のポイントのひとつとなる「宿日直許可」について、医療機関286院と医師359名にアンケート調査を実施しました。
<調査背景> 多くの医師が、医局派遣や副業として、常勤先以外の医療機関でも勤務をしています。 なかでも常勤先の勤務後に働ける当直や週末の日当直では、幅広い年代の医師が副業をしており、医師不足や常勤医の負担緩和に悩む医療機関の支えとなっています。 2024年から始まる医師の時間外労働の上限規制では、総勤務時間が上限を超えないように、副業先を含めた勤務時間の管理が求められるようになります。そこで重要になるのが医療機関の「宿日直許可」の取得有無です。宿日直許可がある副業先であれば、原則的に勤務時間とみなされないため、大学病院の医師派遣の引き上げや非常勤医師の採用ができないといった可能性を避けることができます。宿日直許可を受けられる基本的な条件は、「通常殆ど業務が発生せず、夜間に十分な睡眠が取り得る」場合です。また「一人あたりの宿日直を、宿直は週1回、日直は月1回に収める」等の条件があります。 医療機関の「宿日直許可」の取得状況や、医師への影響について、医療機関・医師への調査を実施しました。 |
<調査結果のサマリー>
◆医療機関
・「宿日直許可」を取得済・取得予定の医療機関は約8割
・「宿日直許可」の取得有無が、医師確保に影響を与えると考える医療機関は6割以上
・「医師の労働時間を管理する」意識が高まっているものの、「副業先も含めた労働時間」をおおむね把握できている医療機関は約半数のみ
◆医師
・約3割の医師が、「医師の働き方改革」で年収が減少すると回答
・「医療機関の宿日直許可の取得状況」がアルバイト探しにおいて重要になる
・年収を維持するために、約半数の医師が「投資などの医業外収入」を検討している
◆医療機関への調査結果
1. 「宿日直許可」を取得済・取得予定の医療機関は約8割
「宿日直許可」の申請予定について質問したところ、78.2%の医療機関が取得済み・取得予定であることが分かりました。「宿日直許可」の取得は、医療機関にとって非常に関心が高いことが分かりました。
2. 「宿日直許可」の取得有無が、医師確保に影響を与えると考える医療機関は6割以上
「宿日直許可」の取得有無は、自院の医師体制確保にどの程度影響があると思うかについて質問したところ、「大きな影響がある」37.4%、「影響がある」27.6%を合わせると、65%の医療機関が影響があると回答しました。
<自由記述回答より>
◆非常勤医師の採用・確保ができなくなる
・夜間当直は非常勤医師にお願いしており大半が大学病院の医師のため、宿日直許可を取らないと夜間当直医師が回らない。(大きな影響がある/100床未満・急性期病院) ・ほとんどの当直をスポットや外勤の先生にお願いしているため、医師の確保が難しくなる。 (大きな影響がある/100床以上200床未満・ケアミックス病院) ・「日直回数が月1回」との回数制限があるため、特に週末の日直に複数回入って頂いる先生については今後1回しかご勤務をお願いできない。(影響がある/100床以上200床未満・急性期病院) |
◆常勤医の負担が増える
・取得しないと当直に穴が開く。時間外の概念を受けない理事長・院長への負担が増大する。(大きな影響がある/100床未満・療養病院) ・当直の大半を外部より調達しているので、許可がなければ大学病院等に勤務する医師からの応募者が減少し、常勤医の負担増となる。その為に医師の増員の検討がさらに必要となる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院) ・近隣の大学病院からの派遣にて宿日直が成り立っている。「宿日直」が取得できないと自院の常勤医師にて体制構築が必要となり、とてつもない負担となる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院) |
◆現在の医療提供体制を維持できなくなる
・宿直医師が決まらない日があれば、その診療科の救急受入が出来なくなる。地域医療にとって大きな問題であると考える。(大きな影響がある/300床以上400床未満・急性期病院) ・医師が少ない地域で2次救急を担当していると、宿日直許可申請が通らない可能性が高い。むしろそういった中小の2次救急指定病院が、2024年の働き方改革に大きく影響される中で、特に医療過疎地域はますます厳しい状況になることが予想される。(100床以上200床未満・ケアミックス病院) ・宿日直許可を得られなかった場合、現在非常勤医師で埋めている当直枠が引き上げによって、埋まらなくなる可能性が高い。そうなると埋まらない枠に常勤医師が入らざるを得ない状況となるが、勤務間インターバルを加味すると翌日の外来、手術、処置などが人手不足となる。(大きな影響がある/200床以上300床未満・急性期病院) |
◆今よりも人件費がかかる
・非常勤医師を多数お願いしなければならない。人件費がかかる。(大きな影響がある/100床以上200床未満・療養病院) ・管理者の宿直回数が増える。やむを得ず週2回目になった際は、時間外報酬として支払うことになる。(100床以上200床未満・精神病院) ・宿日直許可が得られず「勤務時間として対応せよ」となった場合は、多額の人件費が発生してしまう。病院運営に大きな影響が出るため、時間外対応を停止せざるを得ない可能性がある。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院) ・外勤をしている勤務医がいるが、外勤先の施設が宿日直許可を受けていなければ、残業時間超過してしまう可能性がある。また残業時間超過により外勤を辞めてもらう必要が出た際は医師の給与が減ってしまうので、場合によってはその減額分を補填する必要が出てくる。(大きな影響がある/100床未満・ケアミックス病院) |
◆その他
・宿日直許可が時間外労働時間の免罪符的な役割になっている。本来の医師の働き方改革から歪んだ対応になりがちではと感じる。(200床以上300床未満・ケアミックス病院) ・医療機関と医師の合意で十分と思います。宿日直の基準を決めること自体がナンセンス。(100床未満・無床診療所) ・全国的に医師不足なことは誰もが承知している社会問題だが、現実的に不可能に近い要件が示されており、労基、医療現場とも苦慮している。守れるルールと医師の労働のバランスをとり、再度当該事項について検討することが必要であろう。(200床以上300床未満・精神病院) |
3. 「医師の労働時間を管理する」意識が高まっている医療機関は約7割
2024年の「医師の働き方改革」では、医師の労働時間を管理していくために、まずは医師の勤務実態を正確に把握することが重要であるとされています。
医師の働き方改革に向けて「院内で医師の労働時間を管理することへの意識が高まっている」かについて質問したところ、「かなりそう思う」13.3%、「そう思う」55.2%を合わせると、意識が高まっている医療機関は68.5%となりました。
4. 「副業先も含めた労働時間」をおおむね把握できている医療機関は約半数のみ
勤務医の労働時間の把握状況について質問したところ、「自院における労働時間」を把握している医療機関は、「全ての医師について把握している」「大半の医師について把握している」を合わせると、90.6%が把握していると回答しました。
一方で、「副業など自院以外の労働時間」の把握については、「全ての医師について把握している」「大半の医師について把握している」を合わせて56.3%にとどまっており、勤務実態の把握にいまだ大きな課題があることが分かりました。
なお、副業先での労働時間を把握するための方法として最も多かったのは「バイトを申請制にしている」(33.6%)でした。
<副業先の労働時間把握についての回答>
・半年単位で報告してもらっている。(全ての医師について把握している/300床以上400床未満・ケアミックス病院) ・事務部で聞き取り調査を行っている。(大半の医師について把握している/300床以上400床未満・急性期病院) ・医師の働き方改革に伴い、ヒアリング週間を作り調査を実施している。(大半の医師について把握している/400床以上・急性期病院) ・あくまでも自己申告のため性善説で通しているが、実態がつかめていない医師もいる。(大半の医師について把握している/100床以上200床未満・急性期病院) ・他で働いたかどうかの管理は非常に難しい。自己責任と事業所責任をしっかり切り分けて整備してもらいたい。(大半の医師について把握している/100床未満・ケアミックス病院) ・自施設外のアルバイトの申告について強制力を持てないため実態がつかめず、立入りの際に判明しても弁明が可能か不安。都市部・へき地の医師事情を問わずにこのまま進められると弊害が出てくると考えられる。対象施設を厚労省・労基が選定して段階的に進めてもいいのではないか。(100床以上200床未満・急性期病院) ・医療機関、診療科、地域でかなりばらつきがあると考えられるため、一律的なルールづくりは困難。労働時間管理とともに医師の心身の健康を管理するような方策も必要。(200床以上300床未満・精神病院) ・長時間の時間外労働を規制することは、どの職種でも必要なことだと思います。医師の場合は、なぜ長時間労働となってしまうのかという原因にも目を向けて、表面的改善ではなく、抜本的な改革が必要だと思います。(100床以上200床未満・回復期リハビリテーション病院) |
◆医師への調査結果
5. 約3割の医師が「医師の働き方改革」で年収が減少すると回答
「医師の働き方改革」施行後、年収(常勤/非常勤の合計)にはどのような変化が見込まれるかを質問したところ、「大幅に減少する」「減少する」を合わせると、医師の32.8%が収入が減少すると回答しました。
「医師の働き方改革」以降も収入は変わらないと考える医師が全体の4割を超える一方で、およそ3人に1人の割合で「医師の働き方改革」以降は年収が減少すると考える医師が存在しています。
<自由記述回答より>
◆大幅に減少する
・明らかに大幅な収入減となるので、やめてほしい。(60代以上/小児科/一般病院勤務) |
◆減少する
・収入減は避けられない。(50代/一般内科/一般病院勤務) ・大学病院や急性期公立病院などへ勤務する若手医師が減るように思います。(40代/総合診療科/大学病院勤務) ・常勤の勤務時間を制限して、休みたい人は休んで 稼ぎたい人は稼ぐなど バイトは自由に出来るようにして欲しい。(40代/形成外科/一般病院勤務) ・バイトの単価を上げてほしい。(30代/救急科/一般病院勤務) ・常勤の給料アップを目指します。(50代/一般内科/一般病院勤務) |
◆あまり変わらない
・内容をよく理解していません。(30代/脳神経外科/非常勤) ・今のシステムは医師への負担が大きいので、長期的には良いと思う。(30代/整形外科/一般病院勤務) ・業務内容が変わらなければ、今とあまり何も変わらないと思う。(50代/美容皮膚科/クリニック・診療所勤務) |
◆増加する
・目の前に患者がいるのに「勤務時間終了だから帰ります」と医師は言えない。なので、改革にはならないと思われる。(50代/一般内科/非常勤) |
◆まだ分からない
・決まった事は、仕方ないが勤務先の選択はやや慎重になりそう。(50代/一般内科/クリニック・診療所勤務) ・現時点では影響についてよくわかりません。(30代/呼吸器内科/健診機関勤務) |
6. 収入が減少する理由は、非常勤の副業先収入の減少が最も多い
収入が減少する理由としては、「非常勤先の収入が減少するため」(64.4%)が最多となり、次いで「常勤先の収入が減少するため」(19.5%)、「常勤・非常勤両方の収入が減少するため」(16.1%)となりました。
年収が減ると見込んでいる医師が特に懸念しているのは、これまで通りアルバイトができなくなることによる、非常勤先からの収入減であることが分かりました。
7. 「医療機関の宿日直許可の取得状況」がアルバイト探しにおいて重要に
医師が「医師の働き方改革」以降のアルバイトを検討する際には、自身の勤務時間数に関わるため、勤務先となる医療機関が宿日直許可を取得しているかの確認が必要になります。
そのため今後のアルバイト探しにおいて、69.1%の医師が医療機関の宿日直許可の取得状況が分かることが重要であると回答しました。(「非常に重要である」「重要である」の合計)
今後は、宿日直許可の有無が医師のアルバイト募集求人において、欠かせない情報になっていくと思われます。
8. 年収を維持するために、約半数の医師が「投資などの医業外収入」を検討している
「医師の働き方改革」施行後も年収を維持するために検討していることについて質問したところ、「投資などの医業外収入を確保する」172件(47.9%)が最多となり、次いで「宿日直許可のある医療機関でのアルバイトを探す」137件(38.2%)、「転職する」74件(20.6%)となりました。
「その他」では、“働けるうちに稼ぐ”、“フリーランスになる”、“開業する”などの声がありました。
<医療機関 調査概要>
「宿日直許可」の取得状況についてのアンケート
調査期間:2022/11/1~2022/11/18
有効回答:286院
対 象:全国の病院・診療所・老健など
回答属性:急性期病院61院、ケアミックス病院77院、療養病院37院、回復期リハビリテーション病院21院、精神病院31院、有床診療所13院、有床診療所33院、老健3院、その他10院
調査方法:WEBを利用したアンケート調査
<医師 調査概要>
「医師の働き方改革」以降に予測される変化についてのアンケート
調査期間:2022/11/22~11/29
有効回答:359名
対 象:Dr.転職なび・Dr.アルなびに登録する会員医師
調査方法:WEBを利用したアンケート調査
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■医師求人サイト『Dr.転職なび』『Dr.アルなび』について
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多様な働き方を推進し、医師不足・医療従事者の過重労働などの課題解決を目指しています。
株式会社エムステージについて
「すべては、持続可能な医療の未来をつくるために」をビジョンに、医療従事者のキャリア支援・医療機関向け採用支援と事業場向け産業保健サービスを提供しています。
<会社概要>
商 号:株式会社エムステージ
代表者:代表取締役 杉田 雄二
設 立:2003 年 5 月
所在地:〒141-6005 東京都品川区大崎 2-1-1 ThinkPark Tower5 階
事業内容:医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援
本件に関するお問い合わせ先
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