医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)について、医師584名にアンケート調査を実施
医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援を行う株式会社エムステージ(東京都品川区、代表取締役:杉田雄二)は、医師転職求人サイト『Dr.転職なび』、医師アルバイト求人サイト『Dr.アルなび』に登録する会員医師に「医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)*¹についてのアンケート」を実施し、584名より回答を得ました。(調査期間:2022/8/2~2022/8/8)
*¹ 燃え尽き症候群(バーンアウト):今まで真摯に仕事に取り組んできた人が、つらい仕事が原因で精神面・身体面でのストレスを断続的に感じることで、何かをする熱意や意欲を失い、疲れ果ててしまった状態
<調査結果のサマリー>
- 燃え尽き症候群と思われる状態になったことのある医師は約4割
- タイミングとしては、専門医取得後と初期研修時が多い。新型コロナを理由とするものも約1割
- 燃え尽き症候群の最も多い原因は、「業務量の多さ」や「長時間労働」
- 燃え尽き症候群になった時に、行動を起こした医師の多くは「退職」を選んでいる
- 勤務先が実施している医師のストレスケア・メンタルケアは、「特にない」
1.燃え尽き症候群と思われる状態になったことのある医師は約4割
医師として働き始めてから、「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と思われる状態になったことがあるかについて質問したところ、「ない」(58%)、「ある」(42%)となり、約4割の医師が燃え尽き症候群と思われる状態になったことがあると回答しました。
2. タイミングとしては、専門医取得後と初期研修時が多い。新型コロナを理由とするものも約1割
燃え尽き症候群になったことがあると回答した医師243名に、そのタイミングやきっかけについて質問したところ、TOP3は「専門医の取得後」(20%)、「初期研修時」(20%)、「後期研修時」(16%)となりました。また約1割の医師が「新型コロナの感染拡大」により、燃え尽き症候群になったと回答しました。
3.燃え尽き症候群の最も多い原因は、「業務量の多さ」や「長時間労働」
燃え尽き症候群になったことがあると回答した医師243名に、その原因について質問したところ、TOP3は「業務量の多さ」161件、「長時間労働」139件、「十分な休日を確保できない」133件となりました。
<具体的に、どのような出来事があったか(自由記述回答より)>
多忙・長時間労働
・激務の病院で残業200時間/月を越えるような環境で頑張っていたが、1年半ほど経過した時点で心身ともに疲れ果ててしまった。
・とにかく忙しかった。家にいるのは8時間、当直も月10回。そこそこ仕事が出来たので、仕事が出来ない数人の同期の仕事をどんどん回されたのが1番きつかった。
・1週間で7時間しか寝ていない仕事が続き、救命できてもうれしいとは思えなかったし、まるで余命を即座に見据えることができるベルトコンベアーの上を患者さまが流されてくるように思えた。
・繁忙過ぎて病院で寝泊まりするようになり、全てがどうでもよくなり、何があっても驚かなくなった。
・毎日夜遅くまで仕事をして、疲れ果ててしまった。
・忙しすぎて無気力になった。
・忙しくて疲れ果てた。転職しました。
当直・オンコール
・当直が週3回あったのがきつく、涙が止まらなかった。
・当直月8回できつかったです。
・当直が増えた後、起き上がれなくなった。
・月28日くらいオンコール。平均2、3回呼ばれる。下手すりゃ徹夜という状況が続いた。
・救急医療強化のために2人態勢で365日自宅待機を強いられた。
研修医時代
・初期研修医1年目は寝ている時間以外、休日もなくほぼ病院で1年間を過ごした。
・研修医一年目なんて休みは全くなかった。夜中に家にいると輸血を外してくれとかコールが来たりした。あほくさくなって一週間逃避旅行した。あの時のトップには感謝している。
・初期研修半年で先輩から厳しく指導され、初めて担当したガン末期の患者さんがお亡くなりになった時に、もうすべての役目が終わったと思い自殺しようとした。
・厳しい指導のおかげで医師としてはいろいろ学べたが、自宅にいる時間がほとんどなく、いても妻と会話できる状態でもなく、家庭を大事にできなかったことを今でも後悔している。
・研修医時代の頃ですが、時間外労働が長く、今思うと軽い抑うつ状態だったと思います。半年ほど休職して、フリーで健診や簡単な診療などをやらせていただきました。その経験が意外にも今となったら、役立っています。ただ、もう二度と経験したくはないですし、それからは、そうならないよう比較的、自由にやらせてもらっています。
・研修医2年目の時、頭に靄がかかったような感覚から始まり、疲労が日に日に増し、ある日朝布団から出られなくなった。医師3年目に再燃した。投薬のお陰で暫く勤務を続けられたがギリギリの状態で地獄の辛さだった。再燃後半年で退職し3ヵ月海外を旅した。
・初期研修を終え、後期研修になったとたん働く意欲が低下した。
専門医取得時
・NICU勤務で当直でも泊まり、当直じゃなくても遅くまで病棟にいて専門医試験の準備や勉強もして、それが無事に終わった時に色々な事がどうでもよくなった。
・専門医取得後に、条件の悪い外勤先を一方的に教授から押し付けられ、教育業務とあいまって、やってもやっても誰も助けてくれず、疲れ果てた。
・ほぼ専門医、指導医資格を取得して、もう充分と思った。
業務過多
・学会準備や後輩の指導など仕事が重なった。
・学位取得後。結構苦労したので、しばらくやる気が起きなかった。
・仕事では臨床、研究の両立、プライベートでは出産、子育てが重なり、院の卒論を論文化すると、燃え尽きてしまい、何も集中できない時期があった。
・一人病院教授で、業務と責任が集中。
・通常業務に加えて院の仕事が重なり、1か月のうち丸一日休みの日が1日もなくなった。特に院の仕事は無休なこともあり、教える相手の都合に合わせて深夜に出向く必要などもあったため、対応がどんどん雑になってしまった。
新型コロナ対応
・土曜日の一人外来にコロナ患者が集中。
・コロナ患者が増え、業務多忙となるも手当てなどつかず安月給のまま。
・患者家族の対応と、クラスター対応で疲れてしまった。
・感染した。もう嫌だと思った。
人間関係
・担当入院患者に罵られ診療・医療の意思が無くなった。
・主治医として重症患者の診療が続いた。看護師の心ない言葉が最終的に引き金となった。
・自分の持つ全ての気力・体力・誠実に仕事をしたいという気持ちを持ってしても、上司同士の派閥争いに巻き込まれストレスの吐口にされたり、看護師さんからの集団いじめに合い、もうほんの少しも頑張れなくなった。それでも患者さんが途切れる事はないので、一人でゆっくり泣く時間さえ取れず、精神的におかしくなってしまった。
・健診会社に勤めていた時に、古いルールなどを刷新したりと色々な改革をした。それなりの成果を出したが、古くからいる人や改革反対派の対応に疲れ、改革終了後に辞職した。
・勤務病院で診療、手術など忙しいながらも実績を上げてきているところに、新しい医師が入職したが、その医師が診療に協力的でなく多忙とは反対の勤務をしている状況が続き、自分との対比でバーンアウトに至った。
・医局の理不尽な人事と過剰な業務。
心身の不調
・食事をとると下痢をしてしまい、食事がとれない。不眠など。
・働く目的がよく分からなくなってしまった。
・物事を深く考えられなくなった。
・うつになった。
・プライベートが破綻した。
・朝起きられなくなった。
・頑張れなくなった。
・看護師への心ない言動が続いた。
・バーンアウトというかはわかりませんが……仕事が終わり、海を見たくなって海の前で気がつくと3時間程度経っていた。
4.燃え尽き症候群になった時に、行動を起こした医師の多くは退職を選んでいる
燃え尽き症候群になったことがあると回答した医師243名に、その時にどのような行動をしたかを質問したところ、「何も対応せず、そのまま勤務を続けた/続けている」(42%)が最も多い回答となりました。一方で、2番目に多い回答は「退職し、別の勤務先へ転職した」(36%)となり、行動を起こした医師の中では、退職・転職を選んだ医師が多くいることが分かりました。
5.勤務先が実施している医師のストレスケア・メンタルケアは、「特にない」
勤務先で実施されている医師のストレスケア・メンタルケアの施策について質問したところ、TOP3 は「実施されているものは特にない・知らない」245件、「定期的なストレスチェックテスト」217件、「人事や労務などによる相談窓口」121件となりました。
6.医師の燃え尽き症候群(バーンアウト)について、自由回答より抜粋
誰でもなりうる
・先輩や後輩、知り合いだけでも何人も該当者を知っています。失踪した人も何人かいます。普段から抜きどころがないとそうなりやすいようで、特に人付き合いが少ない人に多い印象です。
・かからない人間だと思っていたが、誰でもなりうるものだと実感した。
・いつ自分に起こるか、不安なことはあります。2日連続でオンコールや当直に入らないようにしています。
・頑張りすぎると燃え尽きることを経験してから、なるべく定時帰宅を心がけ、規則正しいパターンで仕事をするようにしている。
・現在は社会情勢からかなり改善されていると思いますが、医師であるかどうかより能力以上の業務量や休暇の無さで誰でもおかしくなると思う。今は大学を辞めて比較的のんびりできる職場に変わりました。
しっかり休む
・有給休暇をしっかり取る。オンオフを切り替える。
・無理に頑張らずに、しっかり休む。
・休日は、病院に行かないようにしています。
・休みの日は必ず設ける。主治医制が悪いとは言わないが、時間外は別の担当が必ず対応するようにすべき。医師の自己犠牲に頼らないようにすべき。
リフレッシュ
・趣味を大切に。
・おいしい料理を食べたり、お酒を楽しむ。
・コロナ前は海外旅行に一年に一度行っていました。病院から絶対電話ないし、呼ばれないから。国内は電話がかかってくる。気持ちがリセットされる。
・卓球してます。身体を動かしてストレス発散!
自分の体調に敏感になる
・不調な兆候を意識する。
・バーンアウトに近い状態になることはある。個人的には、曜日の感覚がなくなってくれば心配な状況に近いので、無理をしてでも休日の時間をとるようにしている。
・他人から指摘されないと分かりにくい時もある。睡眠時間など自覚しやすい指標を意識したい。
・睡眠はしっかりとるようにする。寝不足だとろくな事を考えない。
心の持ち方
・最悪もうダメだと思ったらいつでも辞められると思って、日々頑張っています。
・仕事から得られる充実感は大切なプレゼントのようなものだと思っています。そう感じられるまで成長の痛みがあるのは仕方ないこととは思います。一方で、指導側の心や気持ちが伴っていないと、教えられる側は仕事面だけでなく人格面でも否定されたように感じ、心に傷を残します。お互いに、こうあるべきだと求めても解決にならないので、自分の方で、事態を落ち着いて捉えることができるような、尊敬できる先輩や先生の言葉や模範、感動した格言やエピソードなどをメモして置いて、落ち込んだ時に見返すと自分を取り戻せるように思います。
・どの職種でもあり得ることと認識している。無理だと気づいたらペースを落とすように意識することが大事。特に若いうちは職場で利用されやすいので、良い人にならないよう気をつけることです。
・我慢ならない時は転職をする。
組織制度
・主治医制から複数主治医制へのシフト。
・仮にバーンアウトしたとしても、具体的な相談窓口が設けられていたとしても、相談しやすい環境とはとても言えないと思います。
・ストレスチェックをしても結果が返ってくるのみ。
・自分を自分で守るための法的制度や勤務先の就業規則などを知っておく。産業医がいるなら相談する。勤務先以外にも相談できる専門家を確保しておく。
・最近は、私の部署では職員がバーンアウトするまで追い込まれる前に周辺の者が気付き、サポートする体制ができつつあるように思います。すべては職場各部署の管理者の意識によるところが大きいように思います。はた目から見てまだまだ駄目と思われる部署も多くあります。
・医師に関してはバーンアウトを予防するために個人でできることはそれほど多くはないと思います。医師になるような人間は使命感でオーバーワークしがちになってしまうので自分では前兆に気が付きにくいと思います。ですので、国や厚労省、組織(病院)がバーンアウトに対して意識的に取り組まなければ、解決しないと思います。
・医療界は他の業界に比べて労働条件の改善に対する議論が大幅に遅れていると思いますので、何とかしていただきたいと思います。
医療機関に求められる働き方改革・健康経営の取り組み
使命感を持ってひたむきに仕事へ取り組む人、自分以外の人のために頑張り過ぎる人ほど、燃え尽き症候群になりやすい傾向があります。命と向き合う医療従事者は燃え尽き症候群になりやすい職業と言われており、さらに、医療人材不足等による長時間労働や過重労働といった医療機関の環境課題も、燃え尽き症候群を引き起こす要因となっています。このような背景もあり、医療機関においては、一般企業よりも高いレベルの産業保健活動が必要であると言えます。
2024年からは医師の働き方改革の施行が予定されており、長時間労働の削減などが期待されていますが、労働者の健康管理を行う専門職である産業医を活用することで、専門家の助言・指導に沿った対応を行うことが出来るようになります。医師に対するドクターストップ等の判断は、労働衛生・法令等の豊富な知識が求められるものでもありますので、高い専門性を持った産業医の選任が求められます。
またアンケート結果からは、勤務先の実施しているストレスケア・メンタルケアについて「特にない」が最も多い回答となりました。長時間労働だけでなく、ストレスを緩和するためのケアの充実も重要な取り組みとなります。
医療機関における働き方改革・健康経営の取り組みが、今、求められています。
<解説者>
株式会社エムステージ 産業保健事業部長
歌代 敦 (うたしろ あつし)
25年以上に渡り、健康・医療・メンタルヘルス分野でのコンサルティングに従事し、医療機関や企業の健康経営の推進に携わっている。
■エムステージの『産業保健トータルサポート』について
https://sangyohokensupport.jp/
『産業保健トータルサポート』では、事業場の課題解決に適した産業医の紹介・選任後の業務サポートをはじめ、職場改善につなげる集団分析機能の充実したストレスチェック『Co-Labo』、産業保健師サービス、EAP外部相談窓口、メンタルヘルス・ハラスメント研修、専門家相談サービス等で、産業保健活動・健康経営の実現と促進を総合的に支援しています。HRアワード2021入賞。
■医師求人サイト『Dr.転職なび』転職お役立ちコンテンツについて
https://tenshoku.doctor-navi.jp/blog/
19年に渡り医療機関への医師紹介事業を行うエムステージでは、医療機関や医師に役立つ働き方やキャリアについての豊富な事例・ノウハウを、転職お役立ちコンテンツとして情報提供しています。また、定期的に医師向けのアンケート調査を実施し、医師の生の声を集めて公開しています。
<アンケート調査概要>
アンケート実施日:2022/8/2~2022/8/8
有効回答:584名
対 象:医師求人サイト『Dr.転職なび』、『Dr.アルなび』に登録する会員医師
回答方法:WEBを利用したアンケート調査
※引用・転載時には「株式会社エムステージ」と弊社クレジットを明記下さい。
株式会社エムステージについて
「すべては、持続可能な医療の未来をつくるために」をビジョンに、医療従事者のキャリア支援・医療機関向け採用支援と、事業場向け産業保健サービスを提供しています。
<会社概要>
商 号:株式会社エムステージ
代表者:代表取締役 杉田 雄二
設 立:2003 年 5 月
所在地:〒141-6005 東京都品川区大崎 2-1-1 ThinkPark Tower5 階
事業内容:医療人材総合サービス、事業場向け産業保健支援
プレスリリースに関するお問い合わせ先
株式会社エムステージホールディングス 広報:武田
TEL: 03-6867-1170/MAIL: t.takeda@mstage-corp.jp